日本企業にとっても日本は二の次となる時代がすぐそこに来ている

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昨日、日本出願の予算を削減したいという相談を受けにクライアントの地元米国企業を訪問した。この企業はある種類の半導体関連の装置を世界に向けて製造・販売している、その装置に関してはシェア世界1の企業だ。

彼らにとって特許出願先の優先順位は、米国、中国、台湾、韓国の順で、今や、日本はその次だという。

彼らの認識によれば、それらの国の中で最も特許の取得コストが高いのが日本である。日本に出願しようと思えば、同じ予算で他のアジアの国であれば2,3か国カバーできるという。しかも、それらの国の方が日本より市場が大きく、出願の要請が高い。こんな状況で日本に出願するとすると、それは、非常に重要な技術に限られるのだ。

日本の出願コストが高い理由は、もちろん、日本の高い労働力や高い円にあるが、日本特許庁の審査や裁判所の判断が他の国と比較して非常に厳しいことにも原因がある。何度も理解のできない理由で拒絶を打たれ、そのたびにコストがかさんでいく。その上、いくら頑張っても特許にならずに拒絶される。日本の特許庁からすれば、わかりやすい特許を書けということなのだろうが、外国出願人からすれば他の国ではそのような拒絶を受けておらず素直に登録になっているのだから、訳が分からない。実際のところ、拒絶の多くの原因は特許性というよりも特許の書き方の違いや言語の違いに起因しているということは米国企業もわかっているが、韓国や中国では拒絶されないものまで拒絶されているのが実情だ。何度も出願してもわけのわからない理由で拒絶されるし、おしまいには日本の特許制度に失望しているのだ。

日本に出願しないもう一つの理由は、上記のように料金が高いだけではなく、実際に日本の市場の重要性が低くなっているからだ。私も十年以上前、この事務所を始める前にはある日本の大手電機企業の同種の半導体関連装置の特許出願を書いて、日本を皮切りに世界各国の特許を出していた。その頃までは、確実に日本国内でほとんどの半導体関連装置が作られていた。しかし、今や日本を必要としないのは、その装置が国内で作られていないからだ。また、作っていないだけなく、使ってもいない。だから、特許出願をする必要性が低くなっている。

それでも米国企業が重要な特許については日本に出願するのは、競争相手が日本企業だからで、その開発が日本で行われているからだ。しかし、その日本企業にとっても、特許出願を日本にすることの優先順位は年々低くなっているはずだ。

日本企業は、今は母国日本にとりあえず出願しているが、すぐに日本には特許を出さないという時代が来るだろう。確実に。

日本が世界に対して扉を閉め、開き直るのは自由だ。しかし、それによって私たちの仕事が減っていくのはたまらない。一緒に開き直るか、世界に打って出るか、もう待っている時間はなく、その2者択一が迫られる事態になっているような気がする。

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