再審査制度

当事者系レビューの利用の現状(Oct. 1, 2014)

 近年、米国において当事者系レビュー(Inter Partes Review)の利用が増加しています。  当事者系レビューとは米国特許改正法(American Invents Act)において従来の当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)に代えて導入された特許無効化のための手続きです。従来の当事者系再審査や特許無効訴訟に比べ、審理が迅速であること(最終決定はレビュー開始通知から原則1年以内)、当事者間の和解が可能であること、限定的ながらも一応のディスカバリ(証拠開示手続き)が利用可能であること、専門知識を有する行政官(Patent Trial and Appeal Board)の判断が受けられること、費用が比較的に低廉であること、などから使い勝手の良い特許無効化制度として利用が期待され導入されました。  そのように導入された当事者系レビューですが、その申立件数は年々増加しています。直近(2014年9月25日付)の米国特許商標庁の統計1によれば、当事者系レビューの申立件数は2012会計年度では17件、2013会計年度では514件、2014会計年度では1,290件と、増加の一途を辿っています。このように申立件数が増加している背景には、現状において高い確率で申立人側に有利な判断(すなわち、権利の一部/全体を無効とするとの判断)がなされているという事情があると思われます。このように、当事者系レビューは他者の特許を無効化する有効な手段として認知されつつあります。  しかし、多くのユーザーにとって当事者系レビューの利用を検討する際に高い障壁となるのはその費用であると思われます。当事者系レビューにかかる費用は専門家証人の利用の有無、デポジション(証言録取)の有無など種々の事情にもよりますが、一般に、米国特許商標庁に支払われる最低公費約27,000ドル(約270万円)と代理人費用とを合わせて総額200,000ドル(約2,000万円)から400,000ドル(約4,000万円)と言われています。このことを裏付けるように当事者系レビューの申立件数において上位を占める申立人は軒並み電機・IT業界の大手企業です。ただし、特許無効訴訟を提起すれば一般にその10倍程度の費用を要することに鑑みれば、それでもなお上記費用は比較的に低廉と言えるでしょう。  費用という障壁はあるものの、当事者系レビューの申立て件数の増加という事実は当事者系レビューが懸念特許に悩まされる多くの申立人にとって魅力的な選択肢であることの証左とも言えるでしょう。   なお、多くの場合、当事者系レビューを検討する際には並行する他の訴訟の検討なども伴い種々の事項の総合的な検討が必要となります。従って、当事者系レビューについてご検討の際には必ず専門家である米国弁理士・弁護士までご相談ください。

付与後異議申立て(Post grant review)と当事者系レビュー(Inter partes review)

 AIA施行以前は、特許が登録された後に再審査を請求する手続きとして、査定系再審査請求Ex parte reexamination)と当事者系再審査請求(Inter partes reexamination)の制度がありました。いずれの制度も第三者が特許の無効を請求する手続きとしては利用しにくい側面がありました。そこで今回の改正により、当事者系再審査請求の制度は当事者系レビュー(Inter partes review)に取って代わり、また新たに付与後異議申立て(Post grant review)の制度が導入されました。  査定系再審査請求は特許権者とUSPTOの間で手続きが実施され、第三者は文献を提供する程度にしか手続きに関与することができません。これに対し、付与後異議申立て手続きと当事者系レビューの手続きでは特許権者と第三者との対立構造で、ディスカバリの手続きも小規模ながらあり、第三者が積極的に手続きに関与することになります。  付与後異議申立て手続きと当事者系レビューの手続きの流れはほぼ同じですが、付与後異議申立ては特許付与後9ヶ月以内に行わなければならず、当事者系レビューは異議申立て期間の9ヶ月が過ぎた後、又は異議申立て手続きが終結した後に申し立てることができ、どちらの手続きにおいても、特許権者以外の第三者が申し立てることができます。  付与後異議と当事者系レビューのその他の主な相違点は請求の根拠と手続き開始の要件です。  まず、請求の根拠は、付与後異議申立ては特に制限がありませんが、当事者系レビューは新規性と非自明性の欠如の限定されています。  付与後異議申立て手続きの開始要件は、特許が無効である可能性が有効である可能性より比較的高い(more likely than not)、又は請求が他の特許や出願にとって新しいあるいは決着のついていない法律問題( a novel or unsettled legal question that is important to other patents or patent applications)を提起する場合です。これに対し、当事者系レビューの手続き開始要件は、請求が認められる合理的可能性(reasonably likelihood)が必要で、付与後異議手続きの開始要件よりハードルが少し低くなっています。  USPTOに支払う料金は、付与後異議申立ては$35,800で、当事者系レビューは$27,200とかなり高額になっています。また、代理人費用は案件の複雑さやディスカバリの規模等によりますが、これもかなり高額になるでしょう。しかし裁判所で訴訟を行うとこれ以上の費用がかかると予想されます。  どちらの手続きも原則1年以内に終結することになっており、裁判所での訴訟より期間的にも短く費用的にも低く抑えられますので、訴訟を開始する前に係争を解決する手続きとして利用されることが期待されます。  

査定系(ex parte)再審査制度について

 「再審査」は新たな先行技術を審査官に考慮させるための制度で、特許権者でも、第三者でも請求可能です。また、再審査は権利行使可能な期間であれば、権利消滅後であっても請求可能です(日本の無効審判と同じ)。 この再審査を請求するにあたっては、特許性に関する実質的な新たな指摘 (substantial new question of patentability) を提起する必要があります。例えば、審査で引用されていなかった新たな先行技術に基づく進歩性をの否定等がこれにあたります。 再審査が請求されると、審査官は特許性に関する実質的な新たな指摘が提起されているかを、請求から3ヶ月以内に決定しなければならず、指摘があると判断された場合には、特許権者は指定された期間内(2ヶ月以内)に反論を提出することができます。反論が提出された場合には、再審査請求した第三者は弁駁書を提出することができます。ただし、査定系再審査では、ここで特許権者は反論をすることをしないで第三者に弁駁の機会を与えないのが一般的であるといわれています。査定系再審査では、この後は、特許庁と権利者は一般の審査と同様の審査手続となり、権利者は請求項の補正等や反論を自由にすることができ、それには第三者は一切かかわることができないからです。 このように、この査定系の再審査の制度は、第三者の関与の機会が非常に限られていること、提出出来る証拠の範囲が限定されていること、結果に対する不服申立の手段がない等から、実際には有用な特許無効ツールとしては利用されておらず、むしろ、特許権者側の特許強化のツールとして利用されている側面が強いといわれています。このような事情に鑑みて、第三者の関与の度合いを強めた「当事者系再審査制度」が1999年に創設されました。この制度はAIA施行後は「当事者系レビュー」の制度に取って代わりました。 

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