皆さん、お元気ですか?
今日は、米国で活動する方々にとってはちょっと怖い話かもしれません。。。
以前、岡山大学でこれに関する講演をしたのですが、その題目は、
「日本の大学研究者が米国の学術機関や企業等と共同研究する場合に問題となりうる種々の事項について ~輸出管理法、移民法、特許法、産業スパイ法の観点から~」。
でした。
日米輸出管理法の違い
難しいお話しのように思うかもしれませんが、要は、米国は、非常に厳しい輸出管理法を有するのだということです。
日本にも輸出管理法はありますが、規制範囲がそれほど広くなく、軍事転用可能な技術を政府に無断で外国に持ち出すような場合しか問題になりません。
そういう意味で日本人は認識が甘くなりがちです。
米国の「みなし輸出」は注意が必要
しかし、米国では、「みなし輸出」という規制があり技術の話を聞いただけで問題になる場合があるので、注意が必要です。
みなし輸出とは、実際にはモノや情報を国外に持ち出していなくても、米国内で非米国人(すなわち、この記事を読んでいるあなたのような日本人)に情報を開示することも国外への持ち出し(みなし輸出(deemed export))、すなわち、輸出と取り扱われ、輸出管理法の規制を受けるというものです。
日本人が輸出管理法に違反する場合とは
米国在住の日本人ポスドク等の研究者のほとんどは非米国人であり、日常的に米国で開発された技術情報に接しているわけで、これが、輸出管理法に抵触するとなると、
違法行為となり米国内で研究を続けることができなくなるばかりか、罰金も科されることになるのです。
これは共同研究のような場合充分、起こりうることです。
また、技術情報へのアクセスを悪意を持って行うと、産業スパイ法に違反することなります。
企業スポンサー研究等、企業がらみの研究は注意
幸い大学で行われているような、純学術的な発表を前提としたオープンな研究は輸出管理法の規制の外にありますが、これが、企業スポンサーの研究だったり、企業への移転を前提としている場合には純学術的といえなくなり、輸出管理法の規制対象となります。
大学等で自分のやっている研究が、企業の依頼や委託によるものの場合、注意が必要で、そのような場合には、政府から事前許可をとる必要があります。
私の事務所でも、過去、2度ほど、普通の研究者が疑われた事案に関し、法廷通訳等で関わったことがありました。
永住権保持者は対象外
なお、日本人でも、永住権を持っている人や、就労ビザを持っている自企業内の研究者、米国に帰化した人は対象外です。
昨今、内向き志向が強まっている米国のことですから、心配ですが、専門家に相談しておけば、安心です。
不安な場合には、必ず、そうするようにしましょう!
次回は、どうすればみなし輸出のリスクを回避できるかについて書きたいと思います。
それでは!