雇われない生き方「フリーランス」や「インデペンデントコントラクター(IC)」の落とし穴。

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皆さんこんにちは!

最近、日本でも若者を中心に、「雇われない生き方」に興味を持つ人が多いと聞きます。

確かに最近の日本の大企業やスポーツ協会、部活の不祥事を見ていると、組織に仕えることの不合理等が見え、企業や団体等の組織に雇われることが嫌われるのも理解できます。

インデペンデントコントラクター(IC:独立請負人)とは?

上記のような状況の中から、日本でアメリカによくいるインデペンデントコントラクター(日本語では、独立請負人若しくは個人請負人、以下「IC」)に目を付け、日本でもこのICの考え方を普及させようと動きがあるようです。

例えば、特定非営利活動法人インディペンデント・コントラクター協会のホームページには、以下のような記載があります。

サラリーマンでも、事業家でもなく、フリーエージェントである働き方。
“期限付きで専門性の高い仕事”を請け負い、雇用契約ではなく業務単位の請負契約を“複数の企業”と結んで活動する“独立・自立した個人”のことを、インディペンデント・コントラクターと呼んでいます。つまり、「雇われない、雇わない働き方」こそが、ICの生き方です。

雇う企業からみると「必要な時な時に必要なだけ」専門性の高い領域をコミットし業務を遂行するICを活用する事により、確実にプロジェクトを成功に導き、且つコスト面でもメリットが高いと思われます。
米国ではすでに1000万人近いICが活躍しており、今後日本でも企業の本業回帰の流れと、外部にある知恵を有効に活用していきたいという意向から、ICという働き方が拡大すると言われています。
しかし残念ながら、現在の日本ではICという働き方はまだまだ一般的ではありません。

この文脈で理解すると、ICは自由に、すなわち組織に縛られず、専門性を生かした働き方ができる新しい概念なんだ、と良いイメージを持たれる方が多いと思います。

しかし、そこには大きな誤解があると思います。

企業にとっては、同じ人を雇うなら、被雇用者としてより、ICとして雇った方がコストやリスクが低減できること

上の文脈だと、ICは企業の支配から逃れたい専門性の高い人や、独立心の高いベンチャー志向の人にとってはピッタリという感じがします。

しかし、もしあなたが、企業から、「あなたは専門性が高いから、被雇用者ではなく、ICとして働かないか?」と提案されたらどうでしょう?あるいは、「うちはベンチャー企業だから、従業員は裁量労働のIC扱いで残業代は出ないよ」と言われたらどうでしょう?

実はアメリカでは、企業にとっては、同じ人を雇うなら、被雇用者としてより、ICとして雇った方がコストやリスクが著しく低減できるので、出来る限り被雇用者としてでなくICとして雇いたいという希望があることをご存知でしたか?

WikipediaのIndependent Contractorのページ

を見ると、「被雇用者との比較」の欄の冒頭に以下のような記載があります。

The distinction between independent contractor and employee is an important one in the United States, as the costs for business owners to maintain employees are significantly higher than the costs associated with hiring independent contractors, due to federal and state requirements for employers to pay FICA (Social Security and Medicare taxes) and unemployment taxes on received income for employees.

すなわち、被雇用者の場合には企業は社会保障税、健康保険、失業保険等のサポートをする義務を負います。

[3] Likewise, employees are protected from being fired without cause, and if fired or let go for other reasons are entitled to unemployment benefits, whereas independent contractors have neither protection nor entitlement. Employees are also entitled to receive overtime pay for work performed over the 40-hour-per-week standard, whereas independent contractors may work any number of hours (including far above this standard) with no change in pay.

また、被雇用者の場合には、解雇に対する保護がありますし、残業や適切な休暇を与える義務があり、これに違反すると重大な義務違反となりペナルティーの対象となります。要するに、本来被雇用者として扱われるべき人をICにしてしまうと、後から残業代を全額支払う必要があったり、様々なしっぺ返しを受けることになります。

大企業の場合はICの扱いを慎重にしているので問題になることは少ないですが、意識や知識の足りないベンチャー企業や中小企業では経営者の誤解によって問題が生じることが少なくありません。

そのため、最高裁やIRSは厳しい基準を企業に課して、被雇用者を間違ってICとして扱わないようにガイドラインを出しています(上記Wikipeda参照)。

すなわち、企業にとって被雇用者として雇うと大きな責任と義務を負うことになるのです。

しかし、同じ人を被雇用者としてではなく、ICとして雇えば、それらの責任や義務から解放されるのです。

裏を返せば、もし同じ仕事をするのであれば、ICと被雇用者とでは、絶対的に被雇用者の方が得であるということになります。

それでも、いやいや、ICは、被雇用者にはない「自由」がある!と反論される方がいらっしゃるかもしれません。しかし、本当にそうでしょうか?

ICは自由ならよいのか?そもそも自由なのか?の疑問

独立請負人は、個人の立場で企業から依頼を受けて仕事をします。

しかし、個人の立場は相当に弱いです。

アメリカでは、企業から独立請負人であるとして雇われた人が、被雇用者の利益を求めて訴訟を起こすケースがかなりあります。

代表的なのはUBERのケースだと思います。

【13日付amニューヨーク】配車アプリ「ウーバー(Uber)」の運転手らが失業保険の受給を求めていた裁判で、
配車サービスのビジネスモデルの根幹が訴訟の場に 配車サービスに登録している運転手は、請負業者というより被雇用者として扱われるべきではないか。Uber(ウーバー)とLyft(リフト)が相次いで、連...

UBERのドライバーたちが、俺たちは被雇用者だ!として争っているケースです。日本でも雇われない生き方の推進に疑問を持っておられる方もいらっしゃるようです。

日本は、被雇用者の保護はアメリカよりもかなり手厚い一方、ICの保護は不十分では?

皆さんもご存知のように、アメリカの雇用はat willの世界です。企業は、原則、いつでも理由の説明なしに解雇ができるとされています。

これに対して日本では解雇は簡単じゃありません。

一方で、今の日本の法律は抜け穴が多く、本来被雇用者として保護される立場の人がICとしてこき使われた場合の保護がかなり不十分であるように見えます。

私は、「雇われない生き方」を否定するわけではありません。私自身、「雇われない生き方」をしていますので。

ただ、従業員がやれば良い仕事を単に外注で受けることは「雇われない生き方」というべきではありません。個人をICの弊害から保護する十分な法的手当がないまま、社会が個人に「雇われない生き方」がいいよと煽るのは疑問だと思っています。

いかがでしょうか?

それでは今回はこの辺で失礼します!

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