みなさんは、Infinite Banking Conceptというのを聞いたことあるでしょうか?
この記事の目次
インフィニットバンキング(Infinite Banking)コンセプト(無限銀行概念)とは?
インフィニットバンキング(Infinite Banking)コンセプト(IBC)は、個人が終身生命保険のポリシーローンを活用して、(終身生命保険のキャッシュバリューを)自分自身の「銀行」として機能させるという考え方です。この考え方は、「本当かよ?」という部分があるので、色々議論されていますが、リスクをちゃんと理解した上でやればかなり有用なのでは、と個人的に思っています。
このIBCでは、相互保険会社から終身生命保険を買い、貯まった現金価値(キャッシュバリュー)を利用し、ポリシーローンを借り入れます。自分の生命保険を担保に借りるので金融機関から借りる場合と違って審査はありません。借りた資金には当然利息が付き、返すとしたらこの利息と共に返済する必要があるのですが、実際には、返済計画は必要とされず、個人の意思により、実際には返さなくても良い場合があるというのが特徴です。返さない場合には、生命保険の死亡保険金から借りた分と利息が差し引かれますが、死亡保障額が十分にそれをカバーする金額であれば、問題ないということになります。また、返さない場合、保険の現金価値が落ちていくかというとそういうわけではなくて、そのまま成長していきます。なぜなら、現金価値はローンの担保として機能しており、現金価値からお金を借りているわけではないからです。
借りる額によっては保険が失効するリスクがありますが、十分な金融リテラシーをもって生命保険とローンの仕組みを理解していればそれを防ぐことが可能です。
以下、アメリカ在住のファイナンシャルプランナーのKURICOさんの記事「私の浪費しながらも貯蓄挑戦記。」第1弾~第5弾が役に立つので要約します。
KURICOさんの記事「第1弾:お金貯められるけど、残らない。」
この記事では、KURICOさん自身の浪費癖と貯蓄の挑戦について語っています。銀行を退職し、ファイナンシャルプランナーを目指す中で「Infinite Banking Concept(無限銀行コンセプト)」に出会い、自身で試してみることを決意しましたそうです。
この記事では、まず「富の円グラフ」を用いて、平均的なアメリカ人の支出内訳を説明しています。年収7万ドルの人が30年間働くと生涯年収は210万ドルになりますが、そのうち30~35%が税金、25~30%がローンなどの支払い、残りの30~35%が生活費に充てられます。貯蓄は生活費の15~20%が推奨されていますが、実際には22万500ドル程度しか貯められず、これで家や車の購入、子供の学費、老後資金を賄うのは難しいと指摘しています。
KURICOさん自身も、貯金口座に定額を入れても「貯める⇒使う」を繰り返し、富が残らないと悩んでいます。そこで、浪費家でも実践可能な「Infinite Banking Concept」に注目しました。この概念を理解するためのキーワードとして「Opportunity Cost(機会費用)」と「Wealth Transfer(富の移転)」を挙げています。例えば、5ドルのコーヒーを買うと、その5ドルと将来的な利息分を失うことになります。また、税金やローン、贅沢品の購入などで富を手放すことを「Wealth Transfer」と呼び、これらを減らし、機会費用を失わないことが「Infinite Banking Concept」の核心であると述べています。
次の記事にあるように、KURICOさんは、これを機会にこのコンセプトを取り入れた自身の挑戦を定期的に綴りることにします。
KURICOさんの記事「第2弾:Capitalismを理解する。」
この記事では、KURICOさんが「Infinite Banking Concept(無限銀行コンセプト)」を通じて、浪費家でも資本を蓄積できる方法を探求しています。特に、「Wealth Transfer(富の移転)」と「Opportunity Cost(機会費用)」に焦点を当てています。
KURICOさんは、年収7万ドルの人が30年間働くと生涯年収は210万ドルになりますが、支出や浪費により資本が残らないと指摘しています。例えば、娘の習い事、新車、家族旅行などの支払いで資本を手放し、その結果、資本から得られるはずの利息(機会費用)も失っています。資本主義社会では、資本が生み出す利息部分が重要であり、資本を保全し蓄積することで、将来的に「お金に働かせる」状態を目指すべきだと述べています。
また、KURICOさんがファイナンシャルプランナーを目指す中で受けた質問が紹介されています。「子供を大学に行かせる際、どのお金を使うか?」という問いに対し、KURICOさんは「奨学金、次いで自分のお金」と答えましたが、CEOの答えは「奨学金、次いで他人のお金」でした。この「他人のお金」とは何かについて、次回の記事で詳しく説明すると予告しています。
KURICOさんの記事「第3弾:自分銀行を作る。」
KURICOさんの記事「私の浪費しながらも貯蓄挑戦記。第3弾:自分銀行を作る。」では、浪費家でも資本を蓄積できる方法として「Infinite Banking Concept(無限銀行コンセプト)」を紹介しています。この概念は、銀行の仕組みを模倣し、自身が銀行のように資本を運用することを目指しています。
銀行は預金者から集めた資金をローンとして貸し出し、利息収入を得ています。この仕組みを個人で再現するために、以下の3つの条件を満たす必要があります。
- 相互保険会社(Mutual Insurance Company)の保険:利益が保険契約者に配当として還元されるため、資本の増加が期待できます。
- キャッシュバリュー(解約返戻金)のある終身保険:解約返戻金が資本として機能し、資産形成に寄与します。
- ノン・ダイレクト・レコグニション・ローン(Non-Direct Recognition Loan):保険の解約返戻金を担保に保険会社からローンを受けても、解約返戻金の増加が影響を受けない仕組みです。
これらの条件を満たすことで、自己資本を減らさずに他人の資金(保険会社の資金)を活用し、資本を増やしながら必要な支出を賄うことが可能となります。KURICOさんは、この方法が浪費家であっても資本主義社会で資本と機会費用を失わずに資産を増やす手段として適していると述べています。
KURICOさんの記事「第4弾:自分銀行の始まり」
KURICOさんの記事「私の浪費しながらも貯蓄挑戦記。第4弾:自分銀行の始まり」では、生命保険を活用して自身の銀行を作る「Infinite Banking Concept(無限銀行コンセプト)」の具体的な構築方法と運用について解説しています。
主なポイントは以下の通りです:
- 注意事項:
- 生命保険はあくまで「保険」であり、投資商品として扱うべきではない。
- 配当や利息でキャッシュバリューが増加しても、税金逃れの手段として利用してはならない。
- 1988年以降、税金逃れを防ぐためのルールが定められ、これを逸脱すると「Modified Endorsement Contract(MEC)」とみなされ、課税対象となる。
- 資金投入(Funding):
- MECのルールに抵触しないよう、資本は継続的に投入することが重要。
- 目的や用途に応じて、期間や金額(最低・最大)を柔軟に設定可能。
- 例として、毎月定額を投入する方法や、一括投入後に毎月定額を追加する方法が紹介されている。
- ポリシーローン(Policy Loan)の活用:
- 「自分銀行」に資本が蓄積された後、必要な資金は保険会社からの「他人のお金」をポリシーローンとして借り入れる。
- 「Non-Direct Recognition Loan」を利用することで、自身の資本は減少せず、引き続き利息や配当を受け取ることができる。
- 例えば、新車購入や家の修繕費、バケーション資金などをこの方法で賄うことが可能。
- ポリシーローンの利息と返済:
- ポリシーローンにも利息が発生するが、銀行ローンや住宅ローンと異なり、返済期限は設定されていない。
- ローンを返済すれば、再度「他人のお金」を借り入れることができる。
- 返済を行わずに「自分銀行」に資本を追加することで、資本が増加し、さらなる利息や配当を得ることができる。
この記事では、これらの手法を用いて「自分銀行」を構築し、資本を効率的に増やす方法が詳述されています。
KURICOさんの記事「第5弾:自分銀行の実際のお金の流れ」
KURICOさんの記事「私の浪費しながらも貯蓄挑戦記。第5弾:自分銀行の実際のお金の流れ」では、生命保険を活用して自身の銀行を作る「Infinite Banking Concept(無限銀行コンセプト)」の具体的な資金の流れと運用方法について解説しています。
主なポイントは以下の通りです:
- 資金投入(Funding):
- 27歳の女性が毎月1,000ドル、年間12,000ドルを「自分銀行」に資金投入します。
- 7年間で合計84,000ドルを積み立て、5%の運用を想定すると97,704.10ドルになりますが、実際の「自分銀行」の残高は79,272ドルとなります。
- これは、保険会社が死亡保障1,562,268ドルを確保するためにリザーブを取っているためであり、投資目的ではないため、この差額は許容範囲とされています。
- ポリシーローン(Policy Loan)の活用:
- 8年目も引き続き12,000ドルを資金投入し、「自分銀行」の残高は92,667ドルとなります。
- この時点で47,000ドルをポリシーローンとして引き出し、現金で車を購入します。
- 「自分銀行」の残高は変わらず、借りられる「他人のお金」の部分が43,668ドルに減少します。
- ポリシーローンの金額は「他人のお金」から引かれ、これは「Non-Direct Recognition」の仕組みによるものです。
- ポリシーローンの返済と再利用:
- 8年以降も12,000ドルの資金投入を続け、ポリシーローンの返済は行わず、残高は増加していきます。
- 4年後、購入した車を23,500ドルで売却し、この金額でポリシーローンの一部を返済します。
- これにより、ポリシーローンの残高は33,384ドルに減少し、借りられる「他人のお金」は120,087ドルに増加します。
- ポリシーローンの繰り返し利用:
- 12年目から25年目まで、年12,000ドルの資金投入を続け、5年ごとに車を買い替えます。
- 「自分銀行」の資本は蓄積され、借りられる「他人のお金」の残高は増減します。
- 52年後、9回目の車を23,500ドルで売却し、「自分銀行」の資本は1,938,814ドル、借りられる「他人のお金」は1,143,340ドルとなります。
- 老後資金としての活用:
- 52年以降、借りられる「他人のお金」1,143,340ドルから毎年50,000ドルを引き出し、返済は行いません。
- 93歳で亡くなると仮定し、その時点でポリシーローンの残高は1,659,946ドルとなります。
- この残高は最終的に死亡保障額から差し引かれ、遺族には1,135,080ドルが支払われ、「自分銀行」は終了します。
以上、KURICOさんのブログ記事では、これらの手法を用いて「自分銀行」を構築し、資本を効率的に増やす方法が詳述されています。
考察(自分なりの適用例)
確かに、この考え方によれば、「自分のお金」は減らさず、「他人のお金」を使って例えば車の購入をしていくことことができます。
自分のお金はどうするのかというと、株式投資したり生命保険の支払いに充てるなどして、自分のお金である資産形成に向けるというわけです。
例えば、新型テスラ3を今現金で買おうと思うと38990ドル(567万円)を支払う必要があります。今、この38990ドルを現金で支払ってしまうと、この現金が生み出すはずであった機会価値を得ることができません。例えばこの車を5年乗るとします。その場合、38,990ドルを原資にしてSP500連動型ETFを購入し、過去10年間の平均成長率である14.7%で運用した場合、5年後の投資残高は約77,405ドルになります。この場合、自分のお金を現金一括支払いで使うことによって、原本が生み出すはずであった価値は約38,415ドル(=77,405ドル-38,990ドル)を貰い損ねるわけです。これがKURICOさんの記事でいうところの「Opportunity Cost(機会費用)」となるわけです。また、この場合、現金で車を買うことが「Wealth Transfer(富の移転)」ということになります。
KURICOさんの分析では、このようなことを繰り返しているからリッチになれないというわけです。
したがって、自分のお金を使うのは良い選択肢ではないということになり、他人のお金を使うことを考えるわけですが、まず思いつくのがオートローンの活用です。しかし、この方法だと、原資を用意する必要が無い一方でローン会社に多額の利息を払う必要があります。
そこで、インフィニットバンキング(Infinite Banking)コンセプト(IBC)、すなわち、終身の生命保険のキャッシュバリューからローンを借りるという選択肢がでてくるわけです。この場合、自分から借金するような形になりますので銀行や自動車会社から借りる場合と違って持ち出しは少ないです。特に、終身保険から借りる場合は保険会社によりますが大体の場合利子以上にキャッシュバリューが伸びていきますから、実質金利無しで借り入れることができるというわけです。また、返済計画は自分で建てられ、極端な話KURICOさんのブログ記事にあるように返さないという選択もできます。この場合、実質無料で車に乗れてしまうどころか、投資のリターンももらえるということになるわけです。
このコンセプトいかにもアメリカらしいと思いませんか?一度試してみたいですね!