アメリカに習え?岸田前総理の「資産運用立国」とリタイヤ(引退)に向けたiDeCo拡充の重要性

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

自民党の岸田前総理が掲げた「資産運用立国」を実現するため、新たな議員連盟が設立され、来年度の税制改正でiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充が議論されることになりました。この動きは、今後の日本社会にとって非常に重要であり、老後資金の形成に対する大きな転換点になる可能性があります。

「資産運用立国」の背景

日本は長らく低金利時代が続き、物価が徐々に上昇し始めた今、預貯金だけでは資産価値を守れない時代になっています。日本の家計の金融資産は大半が現金や預貯金に偏っており、これがインフレの進行で目減りするリスクが高まっています。そのため、資産運用、つまり「お金に働いてもらう」という考え方が避けられないテーマとなっています。

ただし、ここで重要なのは「短期的に儲ける投資」ではなく、長期的な視点で老後資金をしっかりと準備するという姿勢です。岸田前総理が掲げた「資産運用立国」というビジョンは、このような社会的課題に対応するための一歩であり、その実現に向けてiDeCoや企業型DC(確定拠出年金)の拡充が必要不可欠です。

新NISAとiDeCoの違い

最近注目されている新NISA(少額投資非課税制度)は、非課税枠がある点で魅力的です。しかし、資金をいつでも引き出せる仕組みのため、長期的な資産形成には向いていない側面もあります。これでは「将来のため」という目的よりも、「お得に投資を楽しむツール」として使われることが多くなるかもしれません。

一方、iDeCoは、60歳まで資金を引き出せない制約があります。この制約があることで、資金を確実に老後資金として積み立てられるのが大きな特徴です。税制優遇も手厚く、個人の老後資産形成をサポートする仕組みとして非常に優れています。そのため、「資産運用立国」の中心的な制度として期待されています。

確定拠出年金の歴史的背景

日本の確定拠出年金制度の登場

日本の確定拠出年金(DC)は、2001年にスタートしました。それ以前の日本の年金制度は、企業が従業員の将来の年金額を保証する確定給付型年金(DB)が主流でした。しかし、バブル崩壊後の経済低迷や、少子高齢化による年金負担増加の影響で、企業が給付を保証する仕組みを維持するのが難しくなりました。

そこで、アメリカの401(k)を参考に、企業の負担を軽減しつつ従業員が主体的に資産形成を行える確定拠出型年金制度が導入されました。この制度は、企業が掛け金を拠出し、従業員がその資金を運用する「企業型DC」と、自営業者や企業に制度がない従業員が自ら加入できる「個人型DC(現在のiDeCo)」に分かれています。

アメリカの確定拠出年金(401(k))の進化

アメリカの401(k)制度は、日本のDCよりも約20年早い1981年に始まりました。当初は、確定給付型年金を補完するための制度として導入されましたが、その後、企業が負担する年金コストを抑えるため、主流の年金制度へと進化しました。現在では、401(k)はアメリカ人の老後資金形成の中心的な役割を果たしており、約6,000万人以上が加入しています。

加入者数と運用残高

日本の現状

  • iDeCo(個人型DC)
    • 加入者数:約400万人(2024年時点)。
    • 平均運用残高:約50万円(運用期間が短い人が多いため低め)。
    • 特徴:自営業者や専業主婦から会社員まで幅広い層が加入できるが、利用率はまだ低い。
  • 企業型DC
    • 加入者数:約1,000万人(2024年時点)。
    • 平均運用残高:約180万円。
    • 特徴:主に大企業で導入が進むが、中小企業ではまだ普及していない。

アメリカの現状

  • IRA(個人型年金)
    • 加入者数:約6,000万人。
    • 平均運用残高:約12万9,200ドル(約1,800万円)(Fidelityの場合)。
    • 特徴:老後資金の補完的な役割。Fidelityの2024年第2四半期のデータによれば、上記の平均残高はこれは前年同期比で14%の増加を示しており、株式市場の好調や安定した拠出が寄与しています。また、IRA口座の残高が100万ドル(約1億5,000万円)を超える「IRAミリオネア」の数も増加傾向にあります。2024年第2四半期には、IRAミリオネアの数が39万8,594件に達し、前四半期比で6%の増加を記録しています。
  • 401(k)(企業型年金)
    • 加入者数:約6,000万人以上。
    • 平均運用残高
      • 全体:約12万ドル(約1,800万円)。
      • 50代以上:約21万ドル(約3,200万円)。
    • 特徴:中小企業を含め広く普及し、老後資金形成の中心。また、401(k)口座の残高が100万ドル(約1億5,000万円)を超える「401(k)ミリオネア」の数も増加傾向にあります。2024年第1四半期には、401(k)ミリオネアの数が48万5,000人に達し、前年同期比で43%の増加を記録しています。

日本とアメリカを比べると、アメリカの401(k)やIRAは加入者数が圧倒的に多く、平均運用残高も大きいことが分かります。これは、制度の歴史が長いことや、税制優遇の手厚さ、掛け金上限の高さなどが影響しています。

制度の成熟度の違い

アメリカでは、401(k)やIRAが40年以上の歴史を持ち、税制や運用の仕組みが国民に浸透しています。一方、日本の確定拠出年金はスタートから20年程度で、特にiDeCoはまだ発展途上の段階です。加入者数や普及率の差が制度の成熟度の違いを物語っています。

主な違い

項目 日本(iDeCo/企業型DC) アメリカ(IRA/401(k))
導入時期 2001年 1981年
加入者数 約1,400万人(iDeCo+企業型DC) 約1億2,000万人(IRA+401(k))
平均運用残高 iDeCo:約50万円 / 企業型DC:約180万円 IRA:約1,800万円 / 401(k):約1,800万円
掛け金上限 年間約80万円(iDeCo) 年間約330万円(401(k))
運用リテラシー 初心者が多く、投資信託選びに慎重 分散投資が一般的で、リスクを取る傾向

日本が目指すべき方向性

日本の確定拠出年金制度を発展させるには、以下の改善が必要です:

  1. 掛け金上限の引き上げ 日本の掛け金上限はアメリカの401(k)と比べて低いため、より大きな資産形成が可能になるよう引き上げが必要です。
  2. 中小企業への普及 企業型DCが大企業中心に留まらないよう、中小企業向けの導入支援策や補助金の拡充が求められます。
  3. 投資教育の充実 初心者が多い日本では、投資信託の選び方や分散投資のメリットを教える教育プログラムが必要です。
  4. 自動加入の導入 アメリカの401(k)のように、自動加入の仕組みを整えることで、加入率を大幅に向上させることが期待されます。
  5. 制度のシンプル化 手続きの煩雑さが加入の障壁になっているため、より分かりやすく、使いやすい制度設計が必要です。

まとめ

日本のiDeCoや企業型DCは、老後資金形成のための重要なツールですが、まだ普及率が低く、制度も発展途上にあります。一方、アメリカの401(k)やIRAは成熟した制度として広く浸透し、多くの国民が老後の資産形成に利用しています。

岸田前総理が掲げた「資産運用立国」というビジョンを実現するためには、税制優遇の拡充や制度の普及促進、そして国民の投資リテラシー向上が欠かせません。これからの改革に期待しながら、私たちもiDeCoや企業型DCを活用し、将来に備えた資産形成を進めていきましょう!

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする