顧問先のアメリカ企業で日本の無効審判と侵害訴訟を含む特許後の手続の講演をやってきました。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

アメリカ東海岸のメリーランド州にある顧問先のアメリカ企業で、企業内弁理士研修として知財部スタッフの方々に日本の特許システムに関する講演をさせていただく機会がありました。

メリーランド州の首都バルチモアの北側に所在し、その分野では世界一のシェアを誇る企業です。

知財部に所属する弁理士(特許弁護士)の数は15名、業務のほとんどは訴訟対応ということでした。

ご存知のように、アメリカでは侵害訴訟よりも経済的に侵害事件を解決する手段としてIPR(当事者系レビュー)の活用に関心が高まっています。IPRに対応するのは、日本では無効審判であることから、皆の関心が高いだろうということで、無効審判と侵害訴訟中での無効抗弁との関係について講義することになったものです。

なお、私の事務所では現在、無効審判5件、特許侵害訴訟1件、審決取消訴訟2件を担当しています。

アメリカの弁理士がIPRのレクチャーをするときには、IPRの利点を色々挙げてIPRを利用しましょう!と宣伝するわけですが、今回やってみて思ったのは、日本の無効審判については同じような宣伝が難しいということです。

それは、

1.統計上、無効審判での特許無効率は、侵害訴訟での特許無効率と比べて低いように見える。

2.審判と訴訟の費用を比べても、アメリカのレベルから見れば大したことない。

3.無効審判を請求すると訂正の機会を与えることになる。

からです。

統計によれば、侵害訴訟の65%で無効審判も請求されているのは、無効審判にそれなりの利用価値があるからですが、それをアメリカ人にも分かるように説明しようと思うと、どうしても複雑なものになってしまいます。

昨年、日本で復活した異議申立制度利用価値に至ってはトランプ次期大統領の言葉を借りればで、Disasterです。この記事を書いている現在異議申立での勝率はほとんど0に等しく、アメリカ的に見れば先行技術を捨てる行為に他ならないからです。

日本の制度をアメリカで宣伝し、利用価値を認めてもらいところですが、なかなか厳しいですね~。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする