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米ユーチューブ社がユーチューバーを提訴
ユーチューブ社(グーグル社)が虚偽の著作権侵害申告をしたYoutuberを米国で提訴したとの報道がありました。
上記記事によれば、YouTuberであるブレイディ氏は、マインクラフト/ゲームクリエイターである同じくYoutuberの「Kenzo」と「ObbyRaidz」の2チャンネルを対象に、著作権侵害申告である「DMCAノーティスアンドテイクダウン手続」の申請を米ユーチューブ社に対して行いました。ユーチューブ社は、DMCA、すなわち、デジタルミレニアム著作権法( Digital Millennium Copyright Act、略称: DMCA)によって義務付けられている通り、すぐに申告の対象である動画を削除しました。
しかしながら、プレイディ氏の申告は実際には虚偽であり、他のクリエイターに圧力をかけて現金を要求するための手段として当該DMCAテイクダウン、すなわちユーチューブ社に対する著作権侵害申告を行っていたのです。
ブレイディ氏の手口は、1つのチャンネルに対して2つのビデオを削除させた後にそのクリエイターに現金を要求するというものです。ユーチューブ社の規則では3つめの著作権侵害警告を行った場合は、そのチャンネル自体を削除させることになっているからです。
このような悪意のユーチューバーはYoutube Trollとも呼ばれます。
ユーチューブ社は上記の事実を把握したため、ブレイディ氏を提訴したものです。
ユーチューバー、25000ドルの賠償金を払わされる
提訴は、和解で終わりましたが、ブレイディ氏は2万5千ドルの賠償金を支払うことになりました。
また、ブレイディ氏は以下のような謝罪文を書かされました。
「私、クリストファー・L・ブレイディは、YouTubeユーザーがアップロードした素材が私の著作権を侵害していると偽って、YouTubeに数十件の申告をしたことを認めます」「私は、私の行動によって直接影響を受けたYouTubeユーザー、YouTubeコミュニティ、そしてYouTube社自体に謝罪します。」
虚偽の著作権侵害申告は世界中で行われ、そのたびにビデオが停止に追い込まれている
デジタルミレニアム著作権法はアメリカの法律ですが、ユーチューブ社は同法に従った措置を、ユーチューバーどこの国に居ようとも同様に適用しています。
したがって、その内容が虚偽であろうとも一定の条件を満たせばユーチューブ社はビデオを削除(正確には公開を一旦停止)します。
これにより停止されたビデオにかかるユーチューバは多大な損害を受けることになり、虚偽の申告をしたユーチューバの目的は達せられることになるのです。
虚偽の申告の責任はそれをしたユーチューバーがとる必要があることは当然ですが、実際にはこのような虚偽の申告が横行しており、至る所で問題が発生しているようです。
上記の例では、明らかな虚偽の申告であり悪質だったためユーチューブ社自体がユーチューバーを提訴しましたが、実際には、虚偽かどうか不明である例も多いのが現実です。たとえば、誤解や知識不足によるものです。ほとんどの場合、「アイデア」に著作権があると主張する場合だと思われます。著作権は特許権のように審査されることもなく発生するというのがその主な原因で、したがって、実際には著作物で保護されるべきでない対象を著作物であると思い込み、著作権侵害の申告に至るというケースがあるのです。
誤解や知識不足によるものであっても、一旦問題が発生すると、解決は当事者間で行うしかなく、解決に時間と費用がかかることになります。場合によっては、感情的になって中傷合戦になったり、訴訟にまで発展することがあります。
我々の事務所でも米国と日本でこのような問題の解決に当たったことがあり、最終的にリスティングは復活しましたが、かなりの時間がかかりました。
日本では編み物ユーチューバー間の裁判が進行中
現在日本でも、編み物のビデオに対する著作権侵害の申告に関してユーチューバー間の裁判が進行中です。
(編み物動画に関するYouTuber同士の訴訟)
裁判所がどのような判断を下すか興味深いところです。
日本では、編み物の編み方や編み図に著作物性があるかに興味が持たれているようですが、私は、それよりも、米国の法律(デジタルミレニアム著作権法:DMCAのノーティスアンドテイクダウン手続)に基づくユーチューブ社の行為(ビデオ公開停止措置)がどのように日本で解釈されるのかに興味があります。日本ではノーティスアンドテイクダウン手続の導入は否定的だからです。
ユーチューブの影響力を考えると、Youtube動画の削除は単に1民間企業が行うにしてはインパクトが大きすぎるという側面があり、申告があった動画を即時に削除するという米国的なプラクティスが日本でも許されるのかは微妙なところです。
また日本ではアメリカのように広いフェアユースが認められていませんから、米国でフェアユースと認められるような行為でも著作権侵害と認められる面もあり、そのあたりの判断もあるか、興味深いところです。
参考までにYoutube社というかグーグル社の著作権侵害対策の資料へのリンクを貼っておきます。
それでは今回はこの辺で!