私の事務所の日本の無効審判の取扱件数は、他の日本特許事務所と比較すると多い方だと思います。
といっても、日本の無効審判の総数は1年でも300件前後なので、大した件数ではないですが。。。。
無効審判の請求数がぱっとしないということで昨年、異議申立制度が復活しましたが、こちらの方はさらに悲惨な件数となっています。
なぜ人気がないのかと言えば、「請求する意味がないから」というのが理由になるのかもしれません。
先週も、日本の特許庁での口頭審理に出廷してきましたけど、皆まじめにやってはいるのですが、結果にはがっかりすることが多いのが実際のところだと思います(あえて詳しくは書きません)。
そんな無効審判口頭審理の翌日に、アメリカでIPR、すなわち、日本の無効審判に相当する当事者系リビューを申し立てたいという日本企業にお会いしました。
このIPR,アメリカでは大人気です。
USPTOから公開されている2016会計年度の情報によれば:
そして、審判開始前に申立人に有利な形での審判開始決定が出される率が68%(2016年度(948件/1392件))、その結果を受けて、審判開始前に和解する件数が25%(229/948件)です。
審判が開始されてから、その進行の状況に応じて和解に至る件数が25%(184件/(948件-229件) )で、最終的に審決までに至る件数はその残りの535件(年度をまたがるケースがあるので推定)ということになります。
審決が出た案件の最終結論ですが、この制度が始まってからの全期間で、全クレーム無効が67%(897件)、 一部のクレームが特許性なしが16%(209件)、全クレーム特許性ありが17%(226件 )となっています。
そして、このIPRがファイルされたことを理由として侵害裁判の停止申立が認められる率が80%となっています。停止されている間にIPRで特許が無効になったり、和解したりすると、侵害裁判は審理に入ることなく終了ということになります。この点も日本の地裁と特許庁との関係とは大きく異なりますね。
以上より、なぜ米国でIPRが人気なのかお分かりいただけるとおもいます。特許が無効になりやすいのが良いか悪いかは別として、請求人からみて利用価値があると認められているからだと思います。