皆さん、こんにちは!
今日は、特許や商標の進捗状況をオンライン
で管理するお話しです。
世の中ではIT化が進展し、ほとんどの情報が
オンラインで閲覧できるようになっている時代
ですが、特許業界では、まだまだです。
そこで、私たちの事務所では、顧客が手軽に
書類を閲覧できるオンライン業務管理システム
を構築しました。
今回は、その開発背景をシェアしたいと思います。
なお、特許を保有している人しか興味のない話題
だと思いますので、それ以外の方はスキップして
頂いて結構です。
この記事の目次
特許庁の状況
約28年前、私が特許事務所に入所した頃は、「オンライン」という概念すらなく、今はちょっと検索すればすぐ取得できる特許公開公報も、面倒な手続きにより業者を使ったりなどして複写を依頼しなければ手に入りませんでした。
その頃は、特許の調査も職員が特許庁を実際に訪れて、公報の収録された冊子を手めくり、すなわち目視でサーチしていました。目にもとまらぬ速さでページをめくりながら独自の視点で目的の情報を見つけ出すサーチャーは、それこそ特殊技能の持ち主だったわけです。
しかし、その後、各国でオンライン出願等が始まると、出願情報の電子化が始まり、ここ10年で、日本の特許庁を含めた多くの特許庁で、過去のデータを含めた出願履歴のファイル、すなわち、「包袋」の電子ファイルを、オンラインサーチ出来るように公開に至りました。
それに伴い検索エンジンも高機能化し、今では特殊技能を持たない個人でも簡単に目的の情報にアクセスできるようになったのです。
ただ、審査官と面接等すると、実際の審査では未だ紙のファイルを利用しているようですが。。。。
特許事務所の状況
一方、特許事務所はどうでしょうか?
特許庁が電子出願による出願書類の受付を始めた25年前以降は、どこの特許事務所も、出願に用いた電子データは何らかの形で保存しているはずですが、それをサーチ出来るように整理している事務所はそう多くはないと思います。
出願書類(特許明細書を含む、特許庁に提出した書類や受領した書類)だけでなく、各種資料や、書類作成のために作ったワード文書や図面ファイル、顧客への報告資料等を、特定のファイルサーバの特定のディレクトリに雑多に保存しているだけだと思います。
したがって、仮にファイルを検索できるシステムを備えていたとしても、クライアントに公開できるような状態ではなく、専ら、所内で共有できるようになっているのが関の山であると思います。
また、所内で検索インタフェースを備えたデータベースを構築するにしても、また、システムを外部の業者から購入するにしてもそれなりの費用とメンテナンス要員が必要であるため、そのようなシステムを備えているのは、ある程度の規模以上の事務所に限られるのではないでしょうか。
大手企業の状況
大きな知財部を有する大手企業はどうでしょうか?
セキュリティ意識の高い大手企業では、独自の知財情報管理システムを構築しているところが多いようです。そして、代理人である特許事務所に、自社システムにログインさせ、そこに提出した書類のアップロードをさせたり、指示書などのダウンロードをさせるようにしているようですね。
このようにすれば、電子メール等で書類を送る必要がないから、高いセキュリティを保つことができ、自社で便利なシステムが出来上がるというわけです。
そのシステムでは、社内で、出願書類だけではなく、発明者から受け取った提案書、代理人に送った指示書や、検討書類、受け取った請求書や、支払い状況、外国出願を含む関連出願の情報が一覧で確認できるようになっているのが普通だと思います。
現在の課題
一方で、大企業以外の、多くの出願人にとって、自社のした出願の管理は、未だ紙ベースだったり、電子メール等で送受信したデータの蓄積にとどまっているのが現状ではないでしょうか。
専用のデータベースが無いので、エクセルやアクセスといった汎用ソフトで一覧を作って管理しているという程度かもしれません。
それでも10件程度なら管理できるかもしれませんが、たとえ10件でも、日本出願だけでなく外国出願もすることになると、あっというまに件数が増えデータ量が増えていき、管理できなくなります。
その結果、何かある毎に、代理人である特許事務所に自社の出願データの一覧を依頼したり、出願書類のデータを送ってもらったりとしているのが現状だと思います。
大手の特許事務所を代理人として使っている場合でも、上述したように、データベースは専ら所内用で、クライアントがアクセスできるインタフェースを持ちませんから、どこの事務所を使っていようが同じだと思います。
特許庁データベースに蓄積された書類へのアクセスが、一般的なhttpリンク(URL)により簡単にできるのであれば、この問題の一部は解決できると思うのですが、現在のところどこの国の特許庁も、一般公開情報に対してロボット等による不正アクセス防止のための手段を講じているため、手動で一から検索するという工程を経ないと所望の書類にたどりつけないようになっています。
特許事務所が依頼人に特許出願関係書類閲覧システムを提供する必要性
上記の理由から、特許事務所には、出願人利用の観点から、出願関係書類を整理して、アクセスしやすい環境で情報を提供するシステムを備える要請があります。
そのシステムは、クライアントがIDとパスワードをもってアクセスでき、ログインしている状態であれば、URLのリンクによりワンクリックで必要な書類にアクセスできるようになっているものである必要があります。
このようなシステムによれば、もはやメールに書類を添付して送る必要がなくなりますから、セキュリティも向上しますし、過去のメールを添付ファイルと共にいつまでも保存しておく必要がなくなります。また、どこからでもいつでも必要書類にアクセスできますから、重たいファイルを持ち運ぶ必要もなくなるというわけです。
恵泉では、顧客利用の観点に立った出願関係書類閲覧システムを開発
そこで、恵泉では顧客利用の観点に立った出願関係書類閲覧システムを開発しました。
現在ところ、
① 依頼案件の検索
② 特許庁提出、受領書類の閲覧
③ 事務所報告書類の閲覧
④ 各種期限の確認
⑤ かかっているコスト、請求書の一覧
が可能になっています。
このシステムは所内で開発したもので、現在のところ、このようなシステムを提供している他の特許事務所は知りません。
現在ところ、外国出願案件用に使用しているものですが、このようなプロジェクトに興味ある方がいらっしゃいましたら、同業者でも拒みませんので(笑)、情報交換等させて頂きたいと考えています。
(下はインタフェース例です)