動画の削除申告をした編み物ユーチューバーらに対する損害賠償が認められた件 

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このブログでも著作権の問題は積極的にとりあげており、つい先日も、米国において虚偽の著作権侵害申告(DMCAノーティスアンドテイクダウン手続)によるユーチューブ動画削除の記事を書きました。

米ユーチューブ社がユーチューバーを提訴 ユーチューブ社(グーグル社)が虚偽の著作権侵害申告をしたYoutuberを米国で提訴したとの報道が...
このブログ記事で取り上げた日本のユーチューバーのテイクダウン申告の適法性についての判決が、12月21日に京都地裁でありました。
動画投稿サイト「ユーチューブ」に公開した動画が著作権侵害との指摘を受けて削除され、精神的苦痛を負ったとして、富山県のユーチューバーの女性が…
以下、この京都新聞記事の引用です。

長谷部幸弥裁判長は女性の動画は著作権侵害に当たらず、削除によって精神的苦痛を負ったとして、被告側に約7万円の賠償を命じた。
判決によると、原告女性と被告女性はともに編み物を編む場面や作品を動画で公開している。被告女性は昨年2月、ユーチューブ側に原告女性の著作権侵害を通知し、動画2本が削除された。
判決理由で長谷部裁判長は、原告女性と被告女性の動画を比較し、「ことさらに類似しているとは認められず、著作権侵害とは認められない」と指摘。「著作権侵害を通知する者は、侵害の有無について一定の確認を行うべき」とした上で、独自の見解で通知した行為に著しい注意義務違反があるとして被告女性の過失を認定した。
(京都新聞ウェブ2021年12月21日)

ユーチューバーの過失責任が認められる

そもそも、異なるユーチューバが作った動画同士が表現の上で類似するとはあまり考えられず、原告の削除申告は、おそらく、編み物の編み方が著作物であるとの誤解によるものであったのだと思います。もちろん、そこには、怒りのような感情はあったとは思いますが、悪意というほどのものではなかったのではないでしょうか?
ただ、そのような思い込みでの削除申告は、確認を怠ったものと判断され過失が認められたのでしょう。
今回の判決では、ユーチューブにおける削除申告については、申告者が一定の責任を負い、確認を怠ると過失による賠償責任が生じると認めた点で画期的だったと思います。
ただ、7万円という額はどうなのでしょうか。

上のブログ記事で説明したアメリカのケースとの単純比較はできませんが、同様の虚偽手動申告(テイクダウン申告)がアメリカで起きた場合、著作権侵害系は賠償額が他の知財と比較して低いとは言え、和解でも数百万円にはなると思われます。
日本のこの7万円は日本人にとってどんな金額なのでしょうか?ある程度の金額でないとやり得感は否めませんね。
代理人弁護士の先生は、「大きな一歩」と言ってますが、この金額を平気でだせるところに日本の裁判所判決の情けなさがありますね。

DMCAテイクダウンノティスの有効性については?

一方、私が注目していたユーチューブ社の米国法に基づく動画削除についての取り扱いが日本法ではどうなるのか?という点については上記記事からでは分かりません。
しかし少なくとも、ユーチューブ社の責任は問われていないようですから、テイクダウン申告によりろくな確認もせずに動画を一方的に削除するというのはOKという判断なのでしょうか?
判決文が手に入ったら良く見てみたいと思います。
それではこの辺で!
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