最近、徐々にではありますが、アメリカ特許庁への直接出願を宣伝文句にした日本人経営の特許事務所の宣伝が目立ってきました。中には5万円なんてところも。こんなに安くて大丈夫かな?と思われるのは当然です。そこで、今回は初心者向け米国特許事務所の見分け方について書きました。なお、恵泉は、「安心」な事務所ですから、ご心配なく
この記事の目次
日本人が利用する米国特許事務所のタイプ分け
日本人・日本企業が利用している米国特許事務所をタイプ分けすると一般的に以下のようになると思われます。
1.米国人米国弁理士が経営するタイプ
(a)日本にオフィスがあり、米国弁理士/日本人担当者が常駐しているタイプ
(b)日本にオフィスはないが、米国オフィスに日本人弁理士/担当者がいるタイプ
(c)日本にオフィスはなく、米国オフィスにも日本人弁理士/担当者もいないタイプ
2.日本人米国弁理士が経営するタイプ
(1)日本事務所が主体であるタイプ(日本オフィス>米国オフィス)
(a)米国弁理士が常駐する相当規模の米国オフィスがあり、その米国オフィスから米国出願を提出するタイプ
(b)米国オフィスに米国弁理士の常駐はなく、日本オフィスから米国出願を提出するタイプ
(2)米国事務所が主体であるタイプ(米国オフィス>日本オフィス)
(a)日本にオフィスがあり、日本弁理士も居て米国出願と日本出願の両方を扱えるタイプ
(b)日本にオフィスがなく、米国出願のみを扱うタイプ
日本人担当者雇用タイプの米国特許事務所は、日本対応が安定しないのが欠点
日本企業や日本弁理士事務所が使っているので最も多いタイプが、1-(c)の「日本にオフィスはなく、米国オフィスにも日本人弁理士/担当者もいないタイプ」です。これは、単純に、この形態の米国特許事務所が圧倒的に多いからです。このタイプは、初心者や中小企業が直接やり取りするのはハードルが高いため、日本の特許事務所を介する場合がほとんどです。
1-(b)の「日本にオフィスがあり、米国弁理士/日本人担当者が常駐しているタイプ」及び1-(a)の「日本にオフィスはないが、米国オフィスに日本人弁理士/担当者がいるタイプ」は、窓口に日本人が成る場合があっても、実際処理を行う米国在住担当弁理士との間のコミュニケーションは英語で行う必要があります。ただし、英語の得意な大企業知財部や翻訳者/通訳者を擁する大手事務所にとっては問題ないと思います。したがって、このタイプも初心者や中小企業が直接やり取りするのはハードルが高いため、日本の特許事務所を介する場合がほとんどです。
なお、このタイプは、日本人担当者は単に雇われているだけであるので、その日本人担当者が何らかの理由で退職や転職したりすると日本語対応ができなくなるというのが欠点です。したがって、日本人担当者はおまけ程度に考えておいた方が無難です。ただし、その日本人担当者が別の法律事務所に転職した場合には、その転職先の法律事務所に案件を移管させることも可能です。ただし、実際の処理を行う弁理士は当然変わることになります。
日本人経営タイプは、実際には米国拠点の実体がない場合があるので注意
2の「日本人弁理士が経営するタイプ」は数としては非常に少ないですが、知財グローバル化の流れにより徐々に増えてきています。日本にアメリカの特許事務所が入ってくると、すわ「日本進出」等と騒がれますが、アメリカではそんなのは日常茶飯事であり、気に留められることはありません。そもそも、米国には「外国人」という定義はありません。世界から様々な国籍の人々が集まってきており、例えばニューヨークを例にとると、住んでいる人の40%が外国生まれであると言われています。もし、「外国人」を親の血統主義であるとするなら、米国生まれの「外国人」も大勢いるわけで、そもそも、インディアン以外は全員が移民のルーツを持つ場所です。したがって、ロシア系特許事務所、イギリス系、ドイツ系、中国系と様々なエスニックの法律事務所が存在します。英語を上手く使えないアメリカ事務所だってざらです。したがって、日本人が経営する事務所があっても何の不思議もないし、その事務所が普通にアメリカの特許事務所として運営されていても誰もおかしく思わないわけです。したがって、2(2)(b)の「日本にオフィスがなく、米国出願のみを扱うタイプ」は現地永住日本人(あるいは元日本人)が普通にやっている米国特許事務所ということになります。このタイプの場合、初心者や中小企業でも気軽に使えるという利点があり、比較的小規模のところが多いので価格も安いと思います。
気をつけなければならないのは、2(1)(b)の「米国オフィスに米国弁理士の常駐はなく、日本オフィスから米国出願を提出するタイプ」です。このタイプは、米国オフィスと言っても形だけであり、全ての通信は日本オフィスからやります。米国オフィスの住所を検索すると、「共有オフィス」(たいていは大手のRegiousの貸しスペース)であったり、普通の住宅(たいていは郊外の一軒家やアパート)であったり、米国特許庁の弁理士検索で検索しても誰も出てこないとか、住所が一致しない(各弁理士は自宅勤務)とかいう結果がでます。このタイプは、米国オフィスを維持していないので価格が安いのが特徴です。しかし、米国特許庁との間で細かい対応が行えないので、単に出すだけという処理がされる恐れが高いので注意が必要です。最近、大規模に宣伝しているいくつかの事務所はこのタイプに分類されると思われます。
したがって、初心者や中小企業にとって安心できるのは2(1)(a)や2(2)(a)のように「米国弁理士が常駐する相当規模の米国オフィスがあり、その米国オフィスから米国出願を提出するタイプ」ということになります。日本の特許事務所で米国オフィスをちゃんと運営しているところはまだ少ないですが、徐々に増えてきています。ただし、どこかの米国法律事務所に間借りしているタイプは、研修生のみで実質的に業務を行っていないタイプなので注意が必要です。
Keisenの強み
恵泉は、2(2)(a)の形態にあたります。日系で、日本と米国にオフィス(独立した日本特許事務所と米国特許事務所ですが)がありながら、米国オフィスの方が大規模であるという恐らく日系では唯一の形態となっています。 日本と米国の出願をワンストップで行えるという経済的な利点を、実際に米国でちゃんとした処理を行うことによって実現していることが恵泉の利点です。
米国特許事務所のタイプを知って上手に使い分けるのが大切ですね。
★同じ記事をKeisenのホームページでも公開してます。