日本、生成AIの拡大を受け著作権法改正の可能性を示唆

生成AIの開発、コンテンツ制作、データ分析に関わる企業の皆様にとって重要となる、日本における知的財産関連の最新動向をお知らせいたします。


📌 生成AIの利用拡大に伴う著作権法の見直し

近年、ChatGPTなどの生成AIが急速に発展し、さまざまな業界で創作支援やコンテンツ生成、データ解析に活用されています。こうした技術の根幹をなすのが、大量の既存コンテンツを「学習データ」として使用する機械学習プロセスです。

日本の法制度:他国と比べて非常に寛容

日本の著作権法(第30条の4)では、2018年の改正により、営利・非営利を問わず、著作物を情報解析の目的で使用することが著作権者の許諾なしに認められています。これは機械学習やAI開発にも適用されており、日本では世界でも有数の自由度の高い法制度となっています。

以下は、他国との比較です:

比較項目 日本 欧州連合(EU) 米国
AI学習のための著作物利用 明確に合法(著作権法30条の4) 一部例外あり(TDM条項)/オプトアウト制度あり フェアユース(Fair Use)理論に基づき個別判断
営利目的の利用 原則不可(権利者の許諾必要) ケースバイケース(訴訟リスクあり)
ライセンス・補償制度の有無 現時点でなし オプトアウト制度あり 特になし(主に訴訟で対処)

その結果、日本では著作物を学習データとして自由に活用できる最も自由度の高い国のひとつとなっており、AI開発企業にとって魅力的な環境となっています。


⚖️ 権利者側からの反発と政府の対応

しかしながら、2024年12月、日本新聞協会は政府に対し、現行制度の見直しを正式に要請しました。現行法では著作権者に許諾も対価も不要であることから、コンテンツ産業の持続可能性が損なわれるとの強い懸念が示されています。

新聞協会などが求めている主なポイントは以下のとおりです:

  • 学習に使用された著作物の出所に関する透明性の確保

  • 著作権者に対する補償・ライセンス制度の構築

  • 生成物の著作権帰属や利用可能性の明確化

日本政府はこれらの意見を踏まえ、2025年に策定予定の「知的財産推進計画2025」において、本件を重要課題として取り上げる見通しです。これにより、著作権法第30条の4の改正、あるいは生成AIに特化した新たな法制度の導入が検討される可能性があります。


🔚 今後、海外企業が注意すべきポイント

こうした法改正の流れを踏まえ、日本市場に関与する海外企業としては、以下の点に留意し、早期対応をご検討いただくことをお勧めします:

  1. 学習データの透明性・適法性の確保
    日本の著作物をAI学習に利用する際には、出所の開示や許諾の取得が求められる可能性があります。

  2. ライセンス制度や補償スキームへの対応
    新たな制度導入により、ライセンス料の支払いや集団管理団体との契約が必要となるケースが想定されます。

  3. 生成コンテンツの使用制限への対応
    生成されたコンテンツの商用利用に関して、新たな制限や明確なガイドラインが導入される可能性があります。

  4. 法的リスクおよびレピュテーションリスク
    現在は比較的リスクの少ない日本市場でも、規制強化の流れが進めば、コンプライアンスやブランド信頼性の確保が一層重要になります。

  5. 国際的な制度の差異への戦略的対応
    日本と米国・EU・中国等との制度の違いを踏まえ、地域別の学習・運用・ライセンス戦略を整備することが不可欠です。


📣 結びに

日本はこれまでAI開発にとって非常に自由度の高い環境を提供してきましたが、今後は透明性・公正性・権利者保護といった国際的な潮流に歩調を合わせた制度整備が進む見込みです。

今のうちから、学習データの見直し、著作物の利用方法の精査、契約・ライセンス体制の整備などを進めておくことで、将来の規制変更にも柔軟に対応することが可能になります。

ご不明な点や、貴社のAI関連事業におけるリスク評価・対応方針の策定についてご相談がございましたら、いつでもお気軽にお問い合わせください。

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