発明が公になっても、公開されてから1年以内であれば新規性を失わずに特許を出願することができます。この1年間の期間をグレースピリオド(one year grace period)といいます。AIA施行前はこの1年の起算日はアメリカでの出願日でしたが、AIA施行後は有効出願日となります。つまり、優先権主張を伴う出願の場合は第1国の出願日となります。
このグレースピリオドを利用することができる条件は、発明者本人が発明を公にしたことであり、公にした手段は問われません。
これはもともとアメリカがAIA施行前は先発明主義だったことに関連しています。先発明主義の下で発明さえしていれば発明後いつ出願してもよい、ということであれば、特許制度の理念に反することになります。発明を公にする代わりに一定期間の独占権を与え、期間終了後は誰でもその技術を利用できるようにすることによって産業の発達に寄与するというのが特許制度です。しかし、発明後いつでも出願できるということであれば、出願を遅らせていつまでも切り札をとっておくことができることになってしまいます。そこで、発明の公開後1年という期間制限を設けることがこのグレースピリオドの制度の目的でした。
しかし、先願主義に変更した後は、このグレースピリオドの制度は上記の元々の目的とは違った利用のされ方がなされるかもしれません。日本の新規性喪失の例外規定とは異なり、発明者は公開しておけば、公開から出願までのグレースピリオドの間になされた第三者による出願にも勝つことができますので、先に公開した者勝ちということになります。今後この制度がどのように利用されるか注目されるところです。