アメリカから移民が一掃されたらアメリカの経済は成り立たなくなる、という見解を聞く事は、ここアメリカにいるとそれほど稀なことではありません。それほど重要な役割を占める移民の経済活動への貢献を特許出願の観点から数次で表した興味深いレポートが発表されています。
このレポートは、Partnership for a New American Economyというパートナーシップによって発表されたものです。このパートナーシップは、ニューヨーク市長のマイケル・ブルーンバーグ氏やフィラデルフィア市長のマイケル・ナター氏をはじめとした全米の党を問わない市長と、マイクロソフト社やウォルト・ディズニー社、さらにはボーイング社のCEO等をはじめとしたビジネス界におけるリーダー達からなるパートナーシップで、米国における移民に関する法整備の改善を目的として結成されたものです。
今回発表されたレポートでは、移民の中でも特に大学における移民生徒による発明と特許に的が絞られており、彼等の活躍が顕著にあわられた調査結果が発表されています。
今回のレポートによると、大学でのリサーチは米国における基礎サーチの53%を占めており、これらのリサーチが特許、企業そして雇用に繋がっている事実が数次で表されています。1995年~2005年に立ち上げられた企業の内、25%の企業に移民が貢献をしており、これらの企業が45万の仕事を作り上げたとレポートされています。
また、特許取得トップ10大学の特許をみてみると、3/4の特許に少なくとも一人の移民がリストされてると発表されています。
米国は、リサーチャーに対する門戸は比較的広く開けられている国だと感じていますが、リサーチャーが大学でのリサーチを終えた後米国を去ってしまうと、それまでに国が提供したリサーチファンドなどを用いて築き上げられた知識が国外に流出してしまうことになります。この流出を防ぎ、引き続き米国に移住させることでさらなる発明への寄与や、さらには雇用に繋がる企業につなげたいというのが、Partnership for a New American Economyの目指すところです。
このレポートのなかには、Partnership for a New American Economyのリコメンデーションとして
1. STEM (Science, Technology, Engineering or Math)の博士号保持者にはグリーンカードを付与する
2. スタートアップ・ビザ(スタートアップの設立を目的とした移民のためのビザ)を新設する
3. 高レベル技術者に付与されるビザの種類にH-1Bがありますが、現在このH-1Bに設定されている付与数(年間65.000)を取り除く
以上3つがあげられています。
優秀な頭脳が魅力的であると感じる国にそれらの頭脳が流出してしまうという問題は昨今に始まったものではありませんが、実際に頭脳がどこにあるのか、また動いた先で直面している”ビザ”という問題等がわかるとても興味深いレポートです。本レポートには、(こちら)からアクセスが可能です。