キムカーダシアンのKimono商標問題、いったいどうなるの？という疑問の答え

皆さんこんにちは！

日本の方々よりキム・カーダシアンのKimono商標問題、いったいどうなるの？というご質問を頂いていましたので、ザクッとしらべてみました。（ウェブ上でも無茶苦茶問題視されてますね。）

The internet has feelings about the name of Kim Kardashian-West's new shapewear line

Kimono Intimates, Inc. applied to trademark a stylized version of "Kimono." The internet was quick to react, calling it "cultural appropriation."

www.businessinsider.com

問題になっている商標はまだ審査されていない

まず、問題になっている商標は、 Kimono Intimates, Inc.という会社によって出願されたばかりであり、まだ審査はされていません。下記は米国特許商標庁からのコピペです。

Mark
Goods and Services	IC 018. US 001 002 003 022 041. G & S: LUGGAGE, BAGS, NAMELY ALL-PURPOSE CARRYING BAGS, TRAVEL BAGS, SHOULDER BAGS, LEATHER BAGS; WALLETS, CARRIERS, WHIPS, HARNESSES, COSMETIC BAGS SOLD EMPTY; PURSES IC 025. US 022 039. G & S: LINGERIE, SHAPEWEAR, BABY DOLL PAJAMAS, STOCKINGS, BREAST SHAPERS, PETALS IN THE NATURE OF NIPPLE COVER PASTIES, NIPPLE COVER PASTIES, BRA INSERTS, BRAS, BRALETTE, SLIPS BEING UNDERCLOTHING, TEDDIES BEING UNDERCLOTHING, ROMPER, BODYSUITS, KIMONOS, ROBES, CORSETS BEING UNDERCLOTHING, BUSTIERS, CAMISOLES, CHEMISOLES, CHEMISES, NEGLIGEE, BIKINIS, BRASSIERE, GIRDLE, NIGHTGOWN, NIGHTIE, LEOTARD, SOCKS, TEE SHIRTS, T-SHIRTS, SWEATSHIRTS, SWIMWEAR, SWIMWEAR ACCESSORIES; HEADWEAR, SHOES NAMELY SANDALS; LEATHER AND IMITATION LEATHER BELTS IC 035. US 100 101 102. G & S: RETAIL STORE SERVICES FEATURING CLOTHING, LINGERIE AND ACCESSORIES
Mark Drawing Code	(0) UNKNOWN
Serial Number		88479867
Filing Date		June 19, 2019

これが登録されてしまったら、Kimonoという言葉は使えなくなるの？と疑問に思っている方、そもそも下着に登録されるなんて、文化の盗用にあたるんではないかと言って怒っている方、いろいろいらっしゃると思いますが、ここは冷静になって考えましょう。

ということで、ちょっと調べてみたところ、同じ会社から、以下のようにKimonoについてのいくつかの出願が出ていることが分かりました。しかも、審査官による拒絶中です。

Kimonoは単なる記述にすぎないという拒絶理由

まず、一件目の下記の出願は、ランジェリーなどを売る小売り業について出されています。そして、上の出願と違ってスタライズされておらず、まさにKimonoという言葉そのもの（フォントを問わない標準文字）で出されています。

これに対しては特許庁の審査が行われ、先行登録例等がある、また、Ｋｉｍｏｎｏは単なる記述にすぎないという理由で拒絶されています。これに対する出願人の応答はまだ出されていないので、ステータスはまだ確定していません。

問題の商標出願は、標準文字だと拒絶されたので出しなおした可能性が高い

２件目の出願は以下のものですが、こちらの方は、標準文字でしかも、問題の商標出願と同じ下着に対して出されています。この出願も先行登録例が引用されると共に、一般名称である。単なる記述にすぎない、という理由で拒絶中です。

これを見ると、どうやら、表記の問題となっている出願は、これに対する対策として、標準文字ではなく、スタライズした図形として出した可能性が高いと思われます。

３件目は以下の出願です。こちらは、香水やバッグに対してだされています。こちらも、拒絶中です。ただし、登録されたとしても被服に関するものではないので、問題は少ないと思われます。

では、問題の商標は登録される可能性があるのか？

図形化されているので登録される可能性は有ると思われます。

しかし、図形化のレベルが低いと審査官が考えれば、上記の標準文字のバージョンと同じ拒絶がでるでしょう。

一方で図形化のレベルが高いと考えられてしまうと登録される可能性があります。

ただし、上記の標準文字のバージョンの拒絶理由を考慮すると、Ｋｉｍｏｎｏそのものに権利が及ぶと良くないと考えられます。そこで、ちょっと調べてみると以下の登録例が見つかりました。

Mark
Goods and Services	IC 025. US 022 039. G & S: Kimonos. FIRST USE: 20180302. FIRST USE IN COMMERCE: 20180302
Mark Drawing Code	(3) DESIGN PLUS WORDS, LETTERS, AND/OR NUMBERS
Design Search Code	05.09.09 – Pineapples 26.11.02 – Plain single line rectangles ; Rectangles (single line)
Serial Number	87819553
Filing Date	March 4, 2018
Current Basis	1A
Original Filing Basis	1A
Published for Opposition	January 15, 2019
Registration Number	5712372
Registration Date	April 2, 2019
Owner	(REGISTRANT) Randazzo, Joseph Paul INDIVIDUAL UNITED STATES 1910 Bataan Rd Redondo Beach CALIFORNIA 90278
Disclaimer	NO CLAIM IS MADE TO THE EXCLUSIVE RIGHT TO USE “KIMONO” APART FROM THE MARK AS SHOWN
Description of Mark	The color(s) black and white is/are claimed as a feature of the mark. The mark consists of The mark consists of a stylized pineapple featuring a rectangle with block letters across the middle that read “Kimono Jo”.
Type of Mark	TRADEMARK
Register	PRINCIPAL
Live/Dead Indicator	LIVE

問題の出願と同じ区分（２５類）で出願され、登録になっている例ですが、注目するべきなのは、「NO CLAIM IS MADE TO THE EXCLUSIVE RIGHT TO USE “KIMONO” APART FROM THE MARK AS SHOWN」として、Ｋｉｍｏｎｏそのものには権利範囲が及ばないというディスクレーマ付きで登録になっている点です。

これをかんがえれば、問題の出願も仮に登録になったとしても同じディスクレーマが付くと思われます。

仮に登録になっても問題はないと思われます

上記のような条件付き登録例を見ると、同じような取り扱いが特許庁でされる可能性が高いと思われますし、そもそも、KimonoについてKimonoという言葉をつかうことが制限されるはずはありません。

なので、使えなくなるの？との心配は当たらないとおもいます。

ただし、「文化の盗用」という点については、有名人の商標と言うこともありますし、批判はされ続けるでしょう。

さて、それでもキムはこの商標を使い続けるのか、興味のあるところです。

以上

（米国弁護士　大澤淑子、米国弁理士・日本弁理士　矢口太郎）