キム・カーダシアン側は、米国特許庁によるKIMONOが単なる記述であるという拒絶にどう応答した?

皆さんこんにちは!

前回の投稿にかなりに反響を頂き、米国商標制度に対する感心の高さを感じましたので、今回はその続編をレポートしたいと思います。

前回の投稿で、キムカーダシアン側のKimono Intimates, Inc.(KI社)は、今回問題になっているスタライズされた(デザイン化された)KIMONOの前にすでに標準文字(書体を限定しない文字)のKIMONOを出願していてそれが現在拒絶中であることを書きました。

皆さんこんにちは! 日本の方々よりキム・カーダシアンのKimono商標問題、いったいどうなるの?というご質問を頂いていましたので、ザク...

実は、KI社はすでにこの拒絶理由通知に対してすでに応答していましたので、その内容についてレポートしたいと思います(すいません前回は見落としていました)。

応答は、2018年10月22日に出されていました。内容は、拒絶理由に対して争うというもので、補正が一緒に提出されています。

拒絶理由は、単に記述的というもの、と、先行登録例に基づくもの、の2種類

この件の出願番号は87886640番です。

Word Mark KIMONO(標準文字)
Goods and Services IC 025. US 022 039. G & S: LINGERIE, NAMELY, UNDERWEAR, PANTIES, HOSIERY, GARTERS AND GARTER BELTS, SHAPEWEAR, BABY DOLL PAJAMAS, STOCKINGS, BREAST SHAPERS, NAMELY, ADHESIVE BRAS, PETALS IN THE NATURE OF BREAST COVERS OR PASTIES, PASTIES, BRA INSERTS, BRAS, BRALETTES, SLIPS BEING UNDERCLOTHING, TEDDIES BEING UNDERCLOTHING, ROMPERS, BODYSUITS, CORSETS BEING CLOTHING, BUSTIERS, CAMISOLES, CHEMISES, BIKINIS, BRASSIERES, GIRDLES, LEOTARDS, SOCKS
Standard Characters Claimed
Mark Drawing Code (4) STANDARD CHARACTER MARK(標準文字)
Serial Number 87886640
Filing Date April 20, 2018

米国特許庁の記録によれば、この出願に対する拒絶理由通知は2018年8月17日に出ていて、1つは先行登録例(2つ引用されています)に類似するというもので、2つ目はKIMONOは指定商品との関係で単に記述的(すなわち、KimonoにKimonoと言う商標をつけようとしている)というものです。

この出願に対して引用された先行登録例の1つはKOMONOです。すなわち、KOMONOとKIMONOが類似すると判断されたというものです。これに対しては、似ていないとして争っています。

興味深いのは、応答書中で、出願人KI社は、KIMONOは、日本の伝統的な衣服の一般名称であり、英語の単語としても認識されていると認めている点です。出願人は、この事実を前提として、対するKomonoは日本語であってまだ英語化されておらず、日本語の意味も全く違うので両社は混同しないと反論しています。

私たちとしては、出願人自らが商標を一般名称とみとめる、それも同じ被服の区分で認めてるというのは、2つ目に普通名称の拒絶理由が挙げられている状況ではちょっと理解できませんが、KI社ははっきりとそのように主張しています。

実は出願当初の指定商品にはKimonoが含まれていたものを応答書で削除していた

2つ目の普通名称であるとの拒絶理由から判明したのは、実はKI社は出願時にはKIMONOSを指定商品に入れていて、上記の拒絶対応のために削除した点です(下の赤字が削除補正部分、黒ブラッケトは私たちが挿入しました)。

上記を総合すると、要するに、KI社側は最初からKIMONOの意味を分かっていたということになります。

そして、今回の応答ではKIMONOの商標マークをKimonoについて取得するのは諦めますから、許可してくれという内容になっています。また、この補正に加えて、ランジェリーを下着等に限定しています。ランジェリーを下着に限定したのはランジェリーのうちガウンはKIMONOであると拒絶理由で指摘されていたからです。ガウンと言うのは欧米で女の人が下着や水着の上から羽織る着物風カーディガンのことです(米国アマゾンでKimono Lingerie で検索してみてください。)。

なお、下の写真はアマゾンでKIMONOを検索した結果です。

日本の場合には、いわゆる類似群コードがあって、下着は全部同じ類似群コードで、一部を削除しても意味ないので、このような補正では許可されないことは明らかです。しかし、アメリカではそのようなコードで判断するプラクティスはありません。したがって、後は審査官の判断に任せられることになります。

また、日本ではKIMONOを削除する補正をすると他の商品については品質誤認であるとして拒絶されるでしょう。なぜなら、着物ではないものにKIMONOというマークを付けると消費者が商品の種類を誤解する可能性があるからです。

しかし、アメリカでは、この品質誤認の拒絶理由は記述的であるという拒絶の一部であり、この点でも日本とはプラクティスが異なります。予想としては、日本のような品質誤認であるとの判断はされず、商品としてのKIMONOは指定商品から削除したから記述的はなくなったと判断される可能性はあります。

我々の予想としては、この出願に限って言えば、KIMONOの標準文字単体であり、下着からガウンを削除しただけでは足りず、拒絶は維持されるのではないかと考えています。

指定商品からKIMONOが削除されたから登録になってもいいのか?

もちろん、日本人の多くの方からすれば、逆に許されないということになるのではないでしょうか?すなわち、着物ではない補正下着などをKIMONOという商標の下で販売することになるのですから。

今後はどうなるのか?

実は引例で引かれたもう一つの先行商標がまだ特許庁で審査中であり、ステータスが確定していないのでそれを待っているというSuspention Noticeなるものが2018年の11月12日に特許庁から出されています。

もう一つの引例に対してはKI社は応答書で何も言っていないので、その拒絶は解消していないというわけです。それでは他の拒絶は解消したのか?という疑問が出ますが、この通知からのみでは不明です。

とにかく、今はサスペンションされているわけです。

これに待ちきれなくなったのか、それともバックアップのためなのか、KI社は今回問題になっているスタライズされたKIMONOのマークを出願してきました。この出願は今月出願されたばかりです。したがって、こちらも決着には暫く時間がかかると思われます。

いかがでしょうか?

一般向けの記事のため書類の添付は省略しましたが興味のある方はお問い合わせください。

以上

(米国弁護士 大澤淑子、米国弁理士・日本弁理士 矢口太郎)

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