日本では、商標権は登録によって発生しますが、アメリカでは、商標は使用することによって権利が発生します。従って、商標登録していなくても、商標を使用していれば、その商標を使用している一定の地域においてコモンロー上の権利が発生します。逆に、登録していても、商標の使用を再開する意思無しに使用を中止すれば、権利は放棄されたものと見なされますので、商標権を維持するためには使用を継続しなければなりません。
また、未使用の商標を連邦登録出願しても、登録までには商標の使用を開始しなければならず、登録査定後には商標を使用していることの宣誓とその使用証拠が求められます。そして、登録後5年目から6年目の間、及び更新時にも宣誓書と使用証拠を提出しなければなりません。このように、登録を維持するためにも商標の使用を継続することは欠かせません。
未登録のまま先に使用を開始した商標権者と連邦登録の商標権者との間で権利の抵触が発生した場合、未登録先使用者は自分が先に使用していた一定地域において、使用の継続が認められます。登録主義であれば登録によって権利が発生しますので、未登録先使用者は使用継続できなくなります。
このように、アメリカの商標法を理解する上で、この使用主義を念頭に入れておくことがとても重要です。そして、この徹底された使用主義に基づく様々な出願登録手続きや権利維持の手続きが登録主義とは異なっています。
では、アメリカは使用によって権利が発生するのに、それでも商標登録する必要はあるのでしょうか?商標の使用によるコモンロー上の権利は権利内容が不明瞭で限定的であるのに対し、連邦登録された権利は明確で安定しており、連邦登録には大きなメリットがあります。具体的な連邦登録のメリットについては「連邦登録のメリット」をご覧ください。