先発明主義から先出願主義への移行が盛り込まれたAIAの施行が2013年3月16日から開始されましたが、先発明主義の利益を享受するためにAIA施行前の出願を代理人から勧められた方や、実際出願をした方も多々いらしたかと思います。
実際に、AIA施行前にどれほどのラッシュ出願がなされたのか、USPTOが発表する統計でみる事ができます。
USPTOは1週間ごとの特許出願数等の統計をまとめ、それを彼らのウェブで公開していますが、その発表によると、施行3週間前までは、本出願(Non-Provisional)においては、1週間の平均約7112件、仮出願に関しては平均約3054件の出願がありましたが、施行前の2週間は本出願平均10151件、仮出願平均3919件と通常の1.5倍、施行開始の最終週には本出願34182件、仮出願24239件となり、最終週に出願された本出願の件数は、通常に比べ約4.8倍、仮出願は通常の約7.9倍の出願がありました。
週最終日 | 本出願 | 仮出願 |
1月11日 | 6603 | 2875 |
1月18日 | 7017 | 2993 |
1月25日 | 6608 | 2893 |
2月1日 | 8262 | 3277 |
2月8日 | 7228 | 3124 |
2月15日 | 6947 | 3200 |
2月22日 | 7120 | 3015 |
3月1日 | 10063 | 3739 |
3月8日 | 10239 | 4099 |
3月15日 | 34182 | 24259 |
上記の数字からは、AIA施行前に仮出願をしたケースが多い様子が見受けられます。AIA施行前の2013年3月15日以前が出願日の仮出願に優先権を主張してAIA施行後の2013年3月16日以降に本出願をする出願、および2013年3月15日以前が出願日の外国出願等に優先権を主張しての米国本出願は、「Transitional Applications」と呼ばれ、ある特定のルールが適用されます。つまり、仮出願で開示された発明の内容と本出願の内容が一致している場合には、AIA施行前の審査ルールが適用されますが、本出願の内容に仮出願では開示されていない請求項が1項でも含まれている場合、AIA施行後の審査ルールが適用されます。
適用されるルール(施行前、施行後)の判断は、USPTOが定めた「Statement」の有無により決定されます。Statementがある場合には、施行後のルールが適用され、Statement がない場合には、施行前のルールが適用されます。このStatementの提出要否を判断するのは出願人です。従ってAIA施行前の出願に優先権を主張して本出願(米国を指定国としたPCT出願を含む)をする場合には、この点に注意をして本出願をする必要がありますので、ご注意ください。