近年、米国において当事者系レビュー(Inter Partes Review)の利用が増加しています。
当事者系レビューとは米国特許改正法(American Invents Act)において従来の当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)に代えて導入された特許無効化のための手続きです。従来の当事者系再審査や特許無効訴訟に比べ、審理が迅速であること(最終決定はレビュー開始通知から原則1年以内)、当事者間の和解が可能であること、限定的ながらも一応のディスカバリ(証拠開示手続き)が利用可能であること、専門知識を有する行政官(Patent Trial and Appeal Board)の判断が受けられること、費用が比較的に低廉であること、などから使い勝手の良い特許無効化制度として利用が期待され導入されました。
そのように導入された当事者系レビューですが、その申立件数は年々増加しています。直近(2014年9月25日付)の米国特許商標庁の統計1によれば、当事者系レビューの申立件数は2012会計年度では17件、2013会計年度では514件、2014会計年度では1,290件と、増加の一途を辿っています。このように申立件数が増加している背景には、現状において高い確率で申立人側に有利な判断(すなわち、権利の一部/全体を無効とするとの判断)がなされているという事情があると思われます。このように、当事者系レビューは他者の特許を無効化する有効な手段として認知されつつあります。
しかし、多くのユーザーにとって当事者系レビューの利用を検討する際に高い障壁となるのはその費用であると思われます。当事者系レビューにかかる費用は専門家証人の利用の有無、デポジション(証言録取)の有無など種々の事情にもよりますが、一般に、米国特許商標庁に支払われる最低公費約27,000ドル(約270万円)と代理人費用とを合わせて総額200,000ドル(約2,000万円)から400,000ドル(約4,000万円)と言われています。このことを裏付けるように当事者系レビューの申立件数において上位を占める申立人は軒並み電機・IT業界の大手企業です。ただし、特許無効訴訟を提起すれば一般にその10倍程度の費用を要することに鑑みれば、それでもなお上記費用は比較的に低廉と言えるでしょう。
費用という障壁はあるものの、当事者系レビューの申立て件数の増加という事実は当事者系レビューが懸念特許に悩まされる多くの申立人にとって魅力的な選択肢であることの証左とも言えるでしょう。
なお、多くの場合、当事者系レビューを検討する際には並行する他の訴訟の検討なども伴い種々の事項の総合的な検討が必要となります。従って、当事者系レビューについてご検討の際には必ず専門家である米国弁理士・弁護士までご相談ください。