【米国著作権法】料理レシピの著作物性について・・・・Publications International社 対 Meredith Corp社「料理レシピ本著作権侵害事件」

よくアメリカのスーパーマーケットの清算場のところに並んでいるようなレシピ本を多く出版するInternational社 とMeredith Corp社が同業者同士で争ったケースです。Meredith Corp社は、自社の出版に係るレシピ本に載っているヨーグルトのレシピが、用語が少し異なるだけで同じレシピを表現したものがInternational社のレシピ本に載っているとして著作権侵害であると主張したものです。

下級審ではMeredith Corp社の訴えが認められ出版の差止め命令が出ましたが、上級審である連邦巡回区控訴裁判所はその判決を覆し、著作権の侵害は認められないとしました。Meredith Corp社のレシピ本は、以前から存在するレシピを複数組み合わせて編集して1つの本にした点に著作物性があるが、レシピそのものはある料理を準備するための事実としての方法であって、著作権法では事実そのものは保護しないというのがその理由です。米国において、著作物というためにはそれが「有形的表現媒体に固定された」(fixed in any tangible medium of expression)ものでなければなりませんが、事実としての料理方法は有形的表現媒体に固定しなくても存在しうる無形の事実若しくはアイデアだからで、著作権法でアイデアは保護しないということです。

特定の種類の料理を作る手順は、要するに事実であり、それをきわめてありふれた用語で単にあらわした個々のレシピには固有の著作物性がなく、著者の個性が表れている部分にのみ著作物性が認められ著作権の効力が及ぶというわけです。本件においては、著作物性が認めれられた部分は、数多くのレシピを纏めて一つの本に編集したという点であったため、International社のレシピ本に掲載されたレシピは明らかにMeredith Corp社のレシピ本中のレシピを言葉を異ならせて再現したものであったにも関わらず、侵害しないという判決となりました。

社会通念としては、料理研究家が開発するレシピは、実際にはその表現方法に価値があるのではなく、その開発したレシピ、すなわち材料の種類、量及びその用い方、手順を特定した料理方法というアイデアに価値があるのですが、残念ながらそれらは、著作権法の保護対象ではないということです。これは、他のホビー系のハウツー本、例えば、シャドウボックス、人形作製、折り紙においても同様です。

なお、上記は個人的な意見であり、個々の具体的案件についての法律アドバイスではありませんので、個々の案件については必ず専門家のアドバイスを受けるようにしてください。

(T)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする


お仕事や講演の依頼用のコンタクフォーム

お仕事や講演の依頼は下記コンタクトフォームからお願いします。