USPTOに係属中の特許出願に対して第3者が情報提供をする場合、AIA施行前には期間およびその規則に関して提供者にとってあまり親切でない規定がありました。AIAによりこの第3者による情報提供に関する規則も改定され、これまでの制度に比べ、かなり利用しやすい制度に変わっています。
AIA以前は、出願の公開から2ヵ月間のみ第三者が情報を提供できるウィンドウがありましたが、今後は以下の期間であれば提出が可能となりました。基本的には、通常の出願であれば、公開されてから許可通知が出されるまでと理解できると思います。
1. Notice of Allowance (許可通知)が付与もしくは発送された日付以前
2. (a) 122項に従った出願の公開から6ヵ月経過後、もしくは
(b)132項に従った審査官による最初の拒絶理由通知の日付後
また、これまでの第3者による情報提供規則では、説明等を加える事ができなかったため、特許公報であれば、公報をそのまま(アンダーラインやハイライトをすることも禁止されていました)提出することしかできませんでしたが、AIA以降のルールでは、先行技術情報と共に説明書を提出できるようになりました。
ただ、第3者による特許前の情報提供制度に関しては、賛否両論あります。例えば、出願係属中に情報提供がなされると、出願人は自分の発明に興味を持っている人がいる事を知ることとなり、なんとしてでも特許をとろうとするパターンもあります。
また、米国の審査官が情報開示として提供された情報をほぼ見ていないというスタディーを目にした事もあります。ただ、出願人自らが提出する先行技術文献と第3者によって提出された先行技術文献では、審査官の取り扱いに対する姿勢に違いが生じることもあるかと思います。
出願係属中の第3者による情報提供があまり有効でないとなると、特許登録後にとることができる以下の制度を利用する事も可能です。
– Ex Parte Reexamination (特許権者もしくは第3者によって申請されるものです。)
– Inter Partes Review (第3者によって申請されるものです。)
– Post-grant review (第3者によって申請されるものです。)
ただし、継続中の出願に対する第3者の情報提供がオフィシャルフィー$180で可能であるのに対し、上記3つの登録後の制度利用に掛かるオフィシャルフィーは、以下の通りかなり高額です。
– Ex Parte Reexamination $17.750
– Inter Partes Review $27,200
– Post-grant review $35,800
Ex Parteに関しては、申請時に詳細に検討をした特許性に対する実質的に新規な疑問(SNQ:Substantial New Question of Patentability)の有無の提出が必須であり、これを弁護士が作成する場合、費用が嵩みます。また、Inter Partesに関しては、申請後もやり取りが繰り返されるため弁護士費用も嵩みます。これらを考慮した上で、状況にあった方策を講じる必要があります。
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