最近の米国連邦巡回控訴裁判所の判決が2020年7月末にデラウェア州の連邦地方裁判所の判決に同意し、英文明細書の翻訳が不的確だったためにクレームを不明瞭で無効とした事例がありました。
出願人IBSA Institut Biochimique製薬会社(スイス・「ISBA」)がい医薬物に関係する発明をアメリカでも特許として登録できたのですが、後にTeva Pharmaceutical Industries製薬会社(イスラエル)の後発医薬品が侵害するとしてISBAが訴えました。
しかし、その明細書に問題がありました。イタリア原出願の表現でsemiliquido(「半液体」や「半流動体」のような言葉)と書かれた言葉がhalf-liquidとしてアメリカの特許出願英文明細書で翻訳されました。裁判の際、出願人の翻訳者がSemiliquidoを意図的にsemi-liquid(同じ言葉として認識される)でなくhalf-liquidと訳したから、原文と多少異なる意味があるはずであると裁判所が見なしました。さらに、原文が引用文献として示されていなかった米国出願用明細書であったため、原文でのsemiliquidoの説明は参考になりませんでした。結果として、裁判所がクレームを不明瞭(indefinite)として無効としました。
以上の判決が示した通り、例えば日本特許出願を優先権主張する米国特許出願を用意される方は、必ず、重要な表現(特に請求項・クレーム!)の訳し方の適性を十分に検討の上、進められることが大切であることは明らかです。特許業務と英文翻訳の経験を持つ特許業務代理人にぜひ、ご相談ください。
参考記事:
判決内容
判決解説